ドローンのメッカで操縦技術を競う in 仙北市

ドローンのメッカで操縦技術を競う in 仙北市

ドローンという言葉を普段から使い始めたのは、3、4年前ぐらいではないでしょうか。僕の初めてのドローン体験は、近所の行きつけのバーで開催されたBBQです。お客様の一人がドローンで記念写真撮りましょうと言われた時だったと記憶しています。その写真の構図に驚き、すごい技術が発展してきなぁとびっくりしたのを今でも覚えています。そんなドローンをどのように活用していったらいいのかを本気で考えて、取り組んでいる秋田県仙北市のイベントをご紹介します。

(1)日本のドローンのメッカを知っていますか?

2017年7月22日(土)、23日(日)の両日、「ドローンテクニカルチャレンジ in 仙北市」が行われました。本競技大会は、遭難などの災害時に迅速、的確、かつ安全にドローンを操縦する技術を競い高めるこで、災害現場における状況把握や人命救助の一翼を担う人材を育成すること。また、競技会を通して、近未来技術の更なる理解と浸透、賑わいの創出を図るとともに、ドローンの活用の可能性を広げ、趣味の領域に留まらず、幅広い分野で活躍する人材輩出のきっかけとなることを期待して競技会が開催されました。

あいにくの悪天候でしたが、当日は未来のドローン技術を担う精鋭たちが集まりました。

参加者数
【学生部門】6校(27名)
【一般部門】19名エントリー(うち8名が棄権。大雨により、秋田県内広域で道路が寸断され、会場にたどり着けない等の理由による。)

結果
【学生部門】
優勝 :国学館高校
準優勝:青山学院大学
第3位:秋田県立大学
第4位:M―4(大曲工業高校)
第5位:秋コアファイターズ!(秋田コアビジネスカレッジ)
第6位:大曲農業高校

大曲農業広告

表彰式

【一般部門】
優勝 :藤本拓磨(神奈川県川崎市)
準優勝:細川明裕(秋田県横手市)
第3位:佐藤源悦(岩手県花巻市)
第4位:淀川心一(秋田県秋田市)
第5位:生内智康(岩手県二戸市)
第6位:加賀谷宜之(宮城県仙台市)
ドローン4

ドローン5

表彰された皆さま、おめでとうございます。ところで、地方創生特区という言葉をご存知でしょうか。「志の高い、やる気のある地方の自治体」が、規制改革により地方創生を実現できるよう、国家戦略特区を更に進化させた特別区域です。特に仙北市は、近未来技術実証特区にも指定され、ドローンによる図書輸送実験、ドローンレースアジアカップの開催、農薬散布用ドローンの活用推進、さらにドローン飛行エリアを設置して、個人や企業に無料で利用させるなど、まさに日本におけるドローン実証実験のメッカなのです。

(2)ドローンテクニカルチャレンジ実行委員会代表の想い

仙北市地域おこし協力隊でドローンテクニカルチャレンジ実行委員会代表の播磨靖之さんが今回の競技大会開催にかける思いを語って下さいました。

学生部門の参加者と一緒に、一列目真中が播磨さん

(学生部門の参加者と一緒に、一列目真ん中が播磨さん)

 ドローン歴2年未満の初心者を対象とした競技会でしたが、経験者数名で相談し、難易度の高いコースをあえて設定しました。GPSによる制御で安定した飛行が可能な屋外と違い、屋内での操縦は安定性に欠け、障害物への接触や機体落下の危険が伴います。
運営メンバーによるテスト飛行も緊張感があり、本番が心配されましたが、選手の皆さんの操縦スキルは想像を遙かに超えて高く、学生部門、一般部門ともにハイレベルな戦いが繰り広げられました。
特に、学生部門で優勝した国学館高校のメンバー5人は、それぞれが大人顔負けの操縦テクニックを持っており、好記録に会場が湧きました。

私自身、ドローンを始めて2年足らずですが、熱戦を目の当たりにして胸が高鳴り、私と同じようにドローンに興味を持った同志の活躍に刺激を受けました。また、ドローンを使って様々な取り組みをされている多くの方々が、県内外から競技会に参加してくれたことをとても嬉しく思いました。
実行委員会の代表として競技会を企画・運営した後、2017年8月からは仙北市の地域おこし協力隊として活動していますが、これからもドローンの可能性を追求し、近未来技術の更なる発展や人材育成に貢献したいと思っています。


(3)空撮だけじゃないドローンの可能性

ドローンと言うと、まず思い出されるのが空撮ですよね。一般の方でも手軽に空撮映像を撮影でき、綺麗な映像が撮影できることから一気に人気が普及しました。有名なところですと、400日にもわたる新婚旅行をドローンで空撮した動画をYouTubeでアップされた夫婦がBBCニュースに取り上げられて、一躍有名になりましたね。空撮だけではなく、点検や測量の分野では既に実用化が進んでいるようです。一方でそれ以上に今求められている技術が、災害時や特別な事情により人が行けないような場所の状況確認や人命救助としての役割です。地震や台風など災害が非常に多い、災害大国日本において、危機的な状況でも遠隔操作で、人が入れない場所を調査確認でき、最終的には人命救助まで可能になれば、ドローンの活用の幅は一気に広がりをみせるのではないでしょうか。東日本大震災の津波被害の時、体が不自由なため逃げ遅れた住人の方がヘリコプターで救出された映像が流されました。当時リアルタイムで見ていた僕は、非常にドキドキし、救出する作業員の活躍が今も鮮明に残っています。もしこれがドローン技術で可能になれば、より多くの方を救出できたかもしれません。

一方、ドローンの普及とともに、ドローンの原因の事故も増えているのも現実です。国土交通省の報告によると2015年には8件、2016年には27件事故が発生しております。空の産業革命と言われるドローン技術、ますます事故が増えていくことが想定されます。この事故を未然に防ぐためにも、操作者の技術向上が求められるのは自然の流れです。その技術の向上を目指すために行われたのが今回の「ドローンテクニカルチャレンジin仙北市」です。操作者の技術向上から、様々な新規事業が生まれていくことになるでしょう。
世界的な市場で見れば、軍事的な利用が最も大きな期待をされているドローン技術ですが、商業利用としての発展が大きく望まれます。荷物の宅配・配送は、過疎化が進む秋田では非常に求められるサービスになると思います。農作物の栽培においても、ドローンが自動運転で様々な事が可能になると、農家の作業効率化が促され、農家をやりたいという若者もどんどん増えていくのではないでしょうか。林業、畜産業への活用など、第一次産業の活性化を、ドローン技術を用いて仙北市から世界に向けて展開できたらとても夢のある事業になると思います。そのような未来を期待せずにはいられません。

(4)戦いの裏にあったアナザーストーリー

運営メンバーの一人、仙北市総務部明平英晃さんが、大会二日目にあったもう一つのストーリーを教えてくれました。
大会当日、観測史上最大の大雨に見舞われた仙北市、会場に助けを求める声が響きました。
「男神橋以北が通行不可能となり、温泉客数十人が孤立状態です。現場確認のため、ドローンを飛ばしてくれる方はいませんか?」

ドローンテクニカルチャレンジ実行委員会からの問いかけに、県内外から集まった参加者全員が協力の意思を示してくれました。7/22からの大雨で仙北市内全域に避難勧告が出され、各地の通行止めや渋滞により、多くの選手が欠場。大会の続行自体を協議する場面もありました。

仙北市役所には災害対策本部が設置され、市の職員は現場確認や避難所対応のため緊急動員という状況下で、ドローンの出動可否が問われたものです。

「ドローンテクニカルチャレンジ in 仙北市」の開催背景には、遭難救助や災害対応があります。その大会当日に、現実として災害が発生しました。

「いま我々にできることは何か」
「有効な機体は?」
「適切な人材は?」

高度なドローン操縦技術をもつ参加者全員が、災害現場での対応策を真剣に考えてくれました。本当に心強いと思った瞬間でした。

現場へ向かうメンバーが決まり、すぐに車へ乗り込もう!というところで、対策本部から入った連絡は”待機”の指示でした。
理由は、災害が広範囲に及んだことと、防災ヘリとの兼ね合い、そして何よりドローン操縦者の安全を約束できる体制が構築できなかったためです。

結局その日、災害対策本部からのGOサインは出ず、最強のドローンクルーの出動は幻となりました。

「ドローンであなたの大切な人を助けませんか?」

ドローンの可能性と未来に期待を寄せた今大会のテーマが、一歩現実に近付いた1日となりました。

ご参加、ご協力をいただいた全ての方々に、改めて感謝を申し上げます。

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