北限のふぐの、新しい食べ方を提案したい。第16回 土崎みなとふくまつり
「ふぐ」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
山口の特産品、高級で手がとどかないもの、毒がありそうーーー私にとってふぐは、そんなイメージがありました。
秋田県土崎で今、力を入れて売り出そうとしているのが「北限のふぐ」。
秋田沖が天然とらふぐの北限の産卵場であることから、この名前がつけられました。
冷たい海水でゆっくりと育つふぐは身が引き締まり、味が濃いのが特徴。
現在では、県外にも多くのファンがいると言います。
今回私は、2017年10月2日〜9日に行われた第16回土崎みなとふく祭りで、北限のふぐのおいしさを実際に体感してきました。
これまでのふぐのイメージを払拭するような、バラエティ豊かな料理の数々に出会うことができましたよ。
「土崎みなとふく祭り」とは?
2006年にはじまった、土崎みなとふく祭り。毎年、ふぐの水揚げのある春と秋に開催しています。
期間中は、土崎にある参加店が共通メニューもしくはオリジナルメニューを提供。
ランチは1,000円台〜2,000円台と手頃な価格帯で、産地ならではのおいしさを味わうことができます。
なぜ「ふく」祭りなのか
ふぐなのに「ふく」祭りなの?と思われるかもしれませんが、昔からふぐという名前は「不具合」に通じ、縁起が悪いとされてきました。
そのため、「福」に通じるように、という願いが込められています。
土崎港中央1丁目 酒肴旬彩 白帆さん
まずお邪魔したのは、土崎港中央1丁目にある酒肴旬彩 白帆さん。
店内はテーブル・カウンター・掘りごたつ席があり、しっとりと落ち着いた雰囲気です。
いただいたのはふく福御膳(2,980円)
とらふぐのお刺身・ごまふぐの炙り刺し・ふぐのから揚げ・土瓶蒸しなど、ふぐをたっぷりと味わうことができる人気メニューです。
もともとは2,500円で出していましたが、少しでもいいからとらふぐを入れたい、ということで現在の形に。「ふぐの食べ比べができて2,000円台で楽しめる」というのがコンセプトだそうです。
ふぐはいい出汁が出るので土瓶蒸しにし、水っぽいふぐの余分な水分が抜けることでおいしくなるから揚げ、そして薄造りのお刺身。この3つすべてが食べられるのが特徴なんだとか。
とらふぐのお刺身は淡白でクセがなく、ふぐ独特のコリコリとした食感が楽しめます。
土瓶蒸しも白帆オリジナルのメニュー。ごまふぐを入れて出汁をきかせてあり、ほっとする味わいでした。
「土崎はふぐの産地としては後発です。王道であるてっさやてっちりでは、本場にはかないません。
同じことをやるのではなく、遊び心を持ちつつ、新しいふぐの食べ方を提案していきたいと思っています。」白帆店主
中央3丁目にある菊寿しさん
次にお邪魔したのは、土崎港中央3丁目にある菊寿しさん。
ふく祭り限定!港福焼き・海鮮ちらしセット(1,800円)をいただきました。
港福(こうふく)焼きは、陶板でふぐをさっと炙り、塩だれ・梅だれ・おろしポン酢だれの3種類のタレで食べるというオリジナルメニュー。
「幸福」に「港」と「ふぐ(ふく)」がかかっていて、縁起がよさそうですね。
「夏といえばバーベキュー!ということで、自分で焼いて食べるスタイルのメニューを考えました。女性には梅だれが人気ですよ。」店主・○○さん
中央5丁目にある喜心(きごころ)
3店舗目は、土崎港中央5丁目にある喜心(きごころ)さんへ。
先代がはじめたお店を息子さんが引き継ぎ、新たに建て直したお店で、Facebookを見てやってくるお客さんが多いのだそう。
フク炊き込みご飯とフク刺・フク唐揚げセット(1,580円)をいただきました。
炊き込みご飯はここだけのオリジナル。お昼は鍋を出していないため、ふぐの出汁を生かしたメニューを入れたいということで考案したそうです。
出汁はとらふぐとしょうさいふぐの骨からとっています。
「自分はふぐは刺身よりも雑炊が好きなんです。ふぐの出汁をぜひ味わってもらいたくて、このメニューを考えました。
刺身はとらふぐ、から揚げはしょうさいふぐと料理によって使い分けています。」店主・富樫さん
中央1丁目にある海の宝箱
4店舗目は、土崎港中央1丁目にある海の宝箱さん。
ふくちらし御膳(1,980円)は、ふぐ刺しがたっぷりとのったちらしに、ふぐのお吸い物・白子豆腐がつくセットです。
ふぐの白子豆腐(480円)は単品でも提供しています。濃厚でとろとろの白子豆腐は、食べたお客さんも「酒のアテにしたいですね」と絶賛。
店主の写真・一言
土崎港中央1丁目にある港の銀水
最後にお邪魔したのは、土崎港中央1丁目にある港の銀水さんです。
「メニュー名?」をいただきました。(感想)
「ふく祭りをはじめた当初からずっと関わってきました。毎年少しずつの積み重ねだと思ってやっています。
たとえばタレが1種類じゃだめとか、時代に合わせて柔軟に対応していくことを心がけています。」
銀水店主
ふぐの食べ方はこんなにたくさん!
こんなにたくさんのふぐを食べたのは、これが初めての経験。
ふぐといえばてっさやてっちりのイメージしかなかった私にとって、リーズナブルにお刺身が楽しめたり、出汁を生かした炊き込みご飯や土瓶蒸しがあったりと、たくさんの楽しみ方ができることにおどろきました。
白子豆腐や陶板焼きなど、オリジナリティのあるメニューも多く、土崎のお店のふぐにかけるこだわりが伝わってきます。
想像していたよりもずっとリーズナブルで、さまざまな料理を少しずつ味わえるセットものが多かったため、ふぐ料理にハードルを感じている人にもぜひおすすめしたいと思いました。
土崎にはおいしいふぐがある
2017年で11年目に入り、今回で16回目を数える土崎みなとふく祭り。
地元では知れ渡ってきたものの、もっと他県の人にアピールしたいというのが課題です。
取材をする中で何度か聞いた、「ふぐを食べることが習慣になってほしい」という言葉。
ふぐはまだまだ、一般的には浸透していない食べ物かもしれません。
でも、秋田には「北限のふぐ」がある。
新鮮でおいしいふぐが穫れる港がある。
そして、それを生かした料理が食べられるお店が、土崎にはあるのです。
土崎でしか食べられない、土崎ならではのふぐを生かした料理を、ぜひ一度味わってみませんか?
今回のライター 秋田で活動中のブロガー里園さん
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